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父の後ろ姿を見て育った私は、気づいたら高校は建築科に進み、休みの日には父の下で大工のアルバイトをしながら生活をしていました。

高校入学当初は「跡を継ぐ」なんてしっかりとした考えはなかったのですが、やはり私も大工の子でした。

高校を卒業する頃には、大工になるという気持ちをしっかりともち、その事を父に相談しました。

その時、父の口から出た言葉は「他で修行をしろ」。

この言葉の意味を知ったのは、随分後にはなりましたが、私は父の言葉の通り、ちょっぴりさみしい気持ちを抱えながら他の会社で大工として働くこととなりました。

それでも大工１年目、初めて自分が携わった家が出来た時にはとても感動しました。当時の会社での仕事は、親方もお施主様もとてもいい人ばかりで、技術だけでなく、人間関係の事に関してもたくさん学ぶことができました。

お施主様の笑顔を見る度に、どんどんやる気がみなぎるこの仕事が、自分にとって天職だとさえ感じるようになりました。

そして７年の月日が経ち、父に「戻って来い」と言われました。７年もお世話なった会社の皆に話をし、止められたときにはさすがに辞めるのが寂しくなりましたが、大工になるきっかけをくれた父の元でやり遂げる、という強い決意と共に、父と祖父の築いてきた大隆建築に戻ってきました。

７年修行した会社と違ったのは、少数精鋭で仕事をしているので、１つ１つの仕事の責任が非常に重いということ。そして前の会社では、直接お施主様と打ち合わせをすることは少なかったのですが、大隆建築に戻り、その打ち合わせの機会も増えたことです。嬉しい反面、「責任」という言葉が重く私にのしかかりました。

しかし、それが分かったのも一度外で修行をしたからこそ。初めから大隆建築で仕事をしていたらそのことに気づくこともできなかったでしょう。

私に「責任」を与えてくれることの喜び、というものに。

そして、戻ってきて分かったことはもう一つ。

「父」の存在の大きさでした。

本人には恥ずかしくて言えませんが、わたしから見た父は本当に人と人との関係を大切にする人で、お施主様お一人お一人の想いをしっかりと汲み取って家づくりをしている父はとても格好よい人間だと思っています。

父は道具の使い方が非常にうまい。古い考えた方の大工だと思いきや、新しいものを率先して取り入れる、アクティブな男でした。
お施主様に対してはとことん優しい父ですが、仕事に関してはとても厳しく、妥協を知らない・・・、そんな父の元で働くことができ、とても刺激になります。